デジタルフォレンジックって簡単?自分でもできる? | 何ができるかや現場の舞台裏を解説!

デジタルフォレンジックって簡単?自分でもできる? | 何ができるかや現場の舞台裏を解説!
デジタルフォレンジックって簡単?自分でもできる? | 何ができるかや現場の舞台裏を解説! 「デジタルフォレンジック」って言葉、最近よく聞くようになりましたよね。でも実際のところ、これって自分でもできるものなのでしょうか? 私がこの分野に携わって10年以上になりますが、よく「ツールさえあれば簡単にできるんでしょ?」なんて質問を受けます。実際はそんなに簡単な話じゃないんです。 実は、デジタルフォレンジックは警察や検察庁などの捜査機関でも活用されている高度な技術です。警察庁のサイトにも「犯罪を立証する上で重要な役割を果たすデジタルフォレンジック(犯罪の立証のための電磁的記録の解析技術及びその手続)を強化し、適正な手続による客観的証拠の収集の徹底を図っています」と明記されているほどなんです。 でも、だからといって一般の人には関係ない話かというと、そうでもありません。個人でもハッキング調査やウイルス感染調査、パスワード解除といったケースで利用されることが増えています。

デジタルフォレンジックとは何か

デジタルフォレンジックとは何か

デジタルフォレンジックを一言で表すと、「デジタル機器から法的に有効な証拠を見つけ出す技術」です。

そもそもフォレンジック(forensic)という言葉は「法廷の」「法的に有効な」といった意味を持っています。つまり、単にデータを調べるだけじゃなくて、裁判でも使える証拠として扱えるレベルの調査をするということなんです。 調査対象となるデジタル機器は本当に幅広くて、パソコンやスマホはもちろん、サーバー、タブレット、USBメモリ、SDカードまで、ありとあらゆるデジタルデバイスが対象になります。

これらの機器から、ファイル、メール、Web閲覧履歴、画像、動画などの情報を収集し、犯罪や不正行為の証拠を調査します。

実際に警察などの捜査機関でも積極的に活用されています。デジタルデータの適切な証拠化が難しいため、サイバー犯罪捜査技術会議の開催や民間のフォレンジック調査会社との技術向上のための取り組みが行われるほど、その重要性は高まっているんです。 個人レベルでも、ハッキング調査、ウイルス感染調査、サポート詐欺調査、パスワード解除、デジタル遺品解析、データ復元など、様々な場面で活用されています。

デジタルフォレンジックの種類

デジタルフォレンジックの種類

デジタルフォレンジックは大きく3つの種類に分けることができます。

コンピュータフォレンジック

PC端末のデータやログを調査・解析する技術です。パソコンやHDD、USBメモリなどからデータを収集し、アクセスログやメールの履歴などを分析します。

この中には「モバイルフォレンジック」も含まれます。携帯電話やタブレットなどのモバイルデバイスから通信記録や連絡先データを解析する技術ですね。

ファストフォレンジック

デジタル機器やネットワーク全体を調査・解析する技術です。必要最低限のデータ抽出・コピーで、社内全体のPCの中からどのPCに異常が発生しているかを素早く特定できます。

ネットワークフォレンジック

ネットワークの通信ログやデータを調査・解析する技術です。ネットワーク上でデジタル機器がいつ、どの経路で、どんなデータを送受信したかなどの情報を収集・解析します。

調査対象機器や調査期間、発生しているインシデントによって必要な技術が変わってくるので、どの種類の調査が必要なのかを最初に見極めることが重要なんです。

自力で調査は可能?現実的な話

自力で調査は可能?現実的な話

「フォレンジック調査って自分でもできるの?」という質問、本当によく受けます。

実際のところ、フォレンジックツールを使って自力で調査する方法はあります。目的に応じて様々な種類のツールが存在しているのも事実です。 でも、ここで正直にお話ししなければいけないのは、これらのツールは万能ではないということです。簡易的なものが多く、フォレンジックサービスに比べて調査の正確性や信頼度が低いんです。

セキュリティベンダーという選択肢

会社でインシデントが発生した場合、まずセキュリティベンダーに相談するケースが多いですよね。

ただ、セキュリティベンダーは調査専門の会社ではないため、調査会社と比較して調査実績やノウハウが乏しいのが現実です。結局フォレンジック調査会社に外注しているケースが多く、仲介手数料が発生して直接依頼するより費用が高くなる可能性があります。

フォレンジック調査会社という選択

結論から言うと、確実で信頼性の高い調査を求めるなら、専門のフォレンジック調査会社に依頼するのがベストです。

専門資格を持つエンジニアが在籍し、調査目的に合わせて適切な手順で調査を行います。何より、調査結果を法的証拠として利用可能な報告用レポートとして作成できるのは、フォレンジック調査会社だけなんです。

実際の調査はどう進む?3つのプロセス

実際の調査はどう進む?3つのプロセス

デジタルフォレンジック調査は「証拠保全」「解析/分析」「報告」の3つのプロセスで進められます。

証拠保全

これが最初で最も重要な工程です。なぜかというと、電磁的記録は誰でも容易に複製・消去・改変できてしまうからです。

調査のためにメディアの中身や数値を書き換えてしまうと、改ざんの嫌疑が生じて証拠としての資格(証拠能力)が失われてしまいます。 そのため、調査対象のメディアを、保全の前後で全く変化させることなく、専用ツールで複製保存する必要があります。完全な複製が行われたことを確認するために、オリジナル機器のハッシュ値(ファイルの指紋)を計算し、完全一致させるという高度な作業が行われています。

解析/分析

専用のソフトウェアを使用し、各種ログを分析したり、攻撃に使用されたマルウェアなどを調査することで、インシデントの原因から被害状況、攻撃者の手口まで割り出します。

証拠隠滅目的でデータが改ざん・削除されている場合は、特殊な技術を用いてデータを復元し、コンピュータの使用者が何をしていたのか特定します。

報告

調査で得られた断片的な情報を整理して、第三者が理解できるように報告書を作成します。

報告書は裁判の法廷(民事・刑事を問わない)だけでなく、企業内や企業間における種々の紛争でも用いることができます。

法的証拠として使うための条件

法的証拠として使うための条件

デジタルデータを法的証拠として利用するには、厳しい条件があります。

デジタルデータは改ざんや削除が簡単にできてしまうため、証拠能力の証明をするのが難しいんです。裁判が有利に進むような情報に書き換えたり、自身に不利な情報を隠蔽する疑惑が生じるためです。

個人情報保護法との関係

マルウェア感染や社内不正などで個人情報の漏えい・流出等の危険性がある場合、デジタルフォレンジックでの調査は非常に重要です。

2022年4月に改正された個人情報保護法では、情報漏えいに対する会社の報告義務が追加されました。漏えい等が発生し、個人の権利利益を害するおそれが大きい場合には、個人情報保護委員会への報告及び本人への通知が義務化されています。

報告義務は速報が発覚日から3~5日以内、確報が発覚日から30日以内という厳しいスケジュールです。

課せられる罰金も30万円~50万円から50万円~1億円に大幅に増額されており、企業にとってはリスクが格段に高まっています。

証拠として認められるための4つの要素

デジタルデータを法的証拠として利用するためには、以下の要素が必要になります。

この中でも「証拠保全」が特に重要です。データの単なるコピーではなく、専用のツールを使用して対象の機器と全く同じクローンを作成し、元の機器と複製のハッシュ値を比較して、値が同一であることで改ざんや削除が行われていないことを証明します。

実際の活用事例を見てみよう

デジタルフォレンジックがどのような場面で活用されているか、実際の事例を見てみましょう。

力士八百長事件の調査

2011年に発覚した大相撲の八百長事件では、押収した携帯電話をモバイルフォレンジック技術で調査しました。

携帯電話のメールやLINE上のメッセージから八百長関与の証拠を収集することに成功し、事件解決の決定的な証拠となりました。

パソコン遠隔操作誤認逮捕調査

2012年に発生したPC遠隔操作事件では、最初は犯罪予告を送付していた端末の所有者4名が逮捕されました。

しかし、機器をフォレンジック技術で調査したところ、機器内部でトロイの木馬やマルウェアが海外サーバーの指示で犯罪予告を送っていたことが発覚。真犯人は別のPCから海外サーバーにアクセスしていた人物だと判明し、4人については誤認逮捕であったことが証明されました。

ディオバン事件(論文データ改ざん事件)

2014年の降圧剤バルサルタンの臨床試験論文データ改ざん事件では、被疑者が所持していたUSBメモリーの調査を行いました。

論文に記載されていた45症例が水増しされていたことが発覚し、データ改ざんの決定的な証拠となりました。 これらの事例を見ると、デジタルフォレンジックがいかに重要な役割を果たしているかがわかりますね。

気になる費用と調査期間

デジタルフォレンジック調査の料金は、一般的に数万~数十万円程度の費用がかかることが多いです。

ただし、「調査を行う業者」「調査対象の種類」「調査内容の規模」「調査の難易度」などによって料金は大きく変わります。 例えば、単純なパスワード解除なら比較的安価ですが、複数のサーバーにまたがる大規模なサイバー攻撃の調査となると、当然費用は高くなります。

まずは信頼できるフォレンジック業者に相談して、見積りをとることをおすすめします。

相談から見積まで無料で対応している業者も多いので、複数の業者に相談して比較検討するのが良いでしょう。 調査期間についても、案件の複雑さによって大きく変わりますが、緊急性の高いケースでは迅速に対応してもらえる業者もあります。

信頼できる調査会社の選び方

デジタルフォレンジックは複雑かつ専門的な分野のため、経験豊富で技術力のある専門家に調査を依頼することが重要です。

選定のポイント

おすすめの調査会社

上記のポイントから厳選したおすすめのフォレンジック調査会社は、デジタルデータフォレンジックです。

デジタルデータフォレンジックは、国内売上No.1のデータ復旧業者が提供しているフォレンジックサービスで、累計39,000件以上の相談実績を持つ調査会社です。

調査・解析専門のエンジニアとは別に、相談窓口としてフォレンジック調査専門アドバイザーが在籍しています。

多種多様な業種の調査実績があり、年中無休でスピーディーに対応してもらえるため、初めて調査を依頼する場合でも安心して相談することができます。 警視庁からの捜査依頼実績やメディアでの紹介実績も多数あり、実績面でも信頼がおけます。法人・個人問わず対応しており、見積まで無料のため費用面も安心です。

調査前に絶対知っておくべき注意点

デジタルフォレンジック調査を依頼する前に、絶対に守らなければいけない注意点があります。

自力で操作するのはNG

インシデント発生後、証拠に必要なデータを操作すると、証拠を損傷する可能性があります。

上書きしてしまったり、アクセス日付を更新してしまったりすると、正しい保全が行われず、フォレンジック業者が証拠保全を行うまでの間に証拠能力がなくなってしまうことがあります。

機器の電源は切らない

機器の電源を落としてしまうと、RAMなどに保存されているデータが完全に削除されてしまい、証拠保全が十分に行われない可能性があります。

機器の電源は切らないで、スリープモード状態で管理し、ネットワークからは遮断して他の機器とは隔離した状態にしましょう。

不審なファイルでも削除しない

不審なファイルやフォルダを発見した場合、攻撃者が残した重要な証拠となることがあります。

不用意に削除するのではなく、まずはバックアップを取るなどして、データを復元できる状態にしておきましょう。調査前に機器を操作するのはなるべく避け、早急に調査業者に依頼することが一番確実です。

よくある質問とその回答

デジタルフォレンジックには限界がある?

はい、いくつかの限界があります。

まず、調査会社によって調査できるインシデントに差があります。同じインシデントでも調査会社によって、調査できる場合とできない場合があるんです。 また、初期化されたデータは削除されたデータとは異なり、内部的なログも削除されてしまうため、復元することが難しい場合があります。 最新機器についても、調査できるようになるまで時間がかかるケースがあります。調査するためには最新の機器を解析できるツールやエンジニアの経験値が必要になるためです。

個人でも調査を依頼できる?

もちろんです。フォレンジック調査会社では、個人・法人問わず調査依頼を受け付けている会社が多いです。

個人での調査利用として多いのは、ハッキング調査、ウイルス感染調査、サポート詐欺調査、パスワード解除、デジタル遺品解析、データ復元などです。

調査結果は裁判で使える?

フォレンジック調査は報告レポートを作成する際に、法的効力の証明まで含めて作成するため、法廷や公的な調査資料として提出することが可能です。

また、当事者に利害関係を持たず、中立的な立場で調査を行うため、裁判でも信頼性の高い資料として認められます。 デジタルフォレンジックは決して簡単な技術ではありませんが、現代のデジタル社会では欠かせない技術になっています。自力での調査には限界があるため、確実な結果を求めるなら専門の調査会社に依頼することをおすすめします。 何かインシデントが発生した際は、まず機器に触れずに専門家に相談することが、真実を明らかにする第一歩となるでしょう。